アリとキリギリスとサラリーマン
会社の帰りのバスの中、窓に張り付いてウロウロしているアリを見つけました。
動物の行動には何かしら理由がある、と聞いたことがありますが、この子はどう見てもサラリーマンの靴やスーツの裾にすがって間違ってバスに乗ってしまったか、風に吹かれて飛んできたかのどちらかにしか見えません。
人間も、何かを目標として行動し、努力をして何かを達成する人よりは、大きな目標など無く決められた仕事を黙々とやっているうちに、アリが風に飛ばされるように就職、異動、倒産、失敗など様々な要因で、気づいてみたら今の生活を送っている人の方が多いのでは、と思います。
人生の目標を持ち、その為の努力をして大金持ちになったり、世界一周をしたり、スポーツでスーパースターになるなんて、そうそういません。大抵の人は家族を守る為に必死で努力して頑張ります。
でも、それで良いんじゃないかと思います。アリだって女王アリや巣を守る為に、食料を運んだり、外敵から仲間を守ったり生物としての生活を本能で淡々と続けて、種を守り死んでいきます。
哲学やら宗教やらを発明している人間と、その他の生物を一緒に論じる事は出来ませんが、でも生き物である事は一緒。何も考えずに周りに流されて過ごしていく事も、楽で幸せだったりもします。
加えて人間の場合、そんな生活の中でお酒を飲んだり、スポーツをしたり、人と会って話をしたり、生きる目的以外の事、つまりアリとキリギリスのキリギリスのような事をスパイスとして生活の中にチョコチョコとふりかけて、ストレスを発散しています。
日々の生活を積み上げる中で、自分を楽にする妥協点を見つけ、息抜きをしながら健康に生きていくこと。これが完全な自由ではないですが、自分と家族や周りを幸せにしていく事なのかな、なんて思います。
ふと、あのバスの中で会ったアリんこは、今頃どうしてるんだろう、と少し心配になりました。
でも、もしかしたら意外と集団生活の息苦しさから抜け出して、ストレス無く自由に1匹で好き勝手な事をして生を全うするのかな、何て想像もしてみました。それは人間ではなかなか出来ない人生です。